中性子の測定
中性子は、物質を簡単に透過できる放射線で、核分裂など高いエネルギーをもつ中性子は大きな被ばくとなります。
中性子は、熱中性子線と高速中性子線があります。
- 原子炉中など核分裂の時には、とても速度が速くエネルギーが高い「高速中性子」がでてきます。
- 速度の速い中性子は、空気やいろいろなものと衝突を繰り返すことで最終的にはとても低速な「熱中性子」になります。
利用目的 | 特徴 | 最適な製品 |
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人間の被ばく量を数値化した値である「シーベルト単位」での測定の場合には、大きな減速材をまとったBDKN-03が最適です。 大きな減速材を使うことで熱中性子~高速中性子まですべてに対して良好なエネルギー特性をもつことになるため、人間の被ばく量を測定ための最適な測定器となります。 |
BDKN-03![]() |
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中性子の存在をすぐに検出して警告する、どこに中性子の発生源があるのか探す、という目的の場合には薄い減速材のBDKN-05, BDKN-01がおすすめです。 減速材が分厚くなると測定器のエネルギー性能はよくなりますが、一方で感度が極端に低くなるため中性子の線源位置を短時間で探すことには向いていません。 BDKN-05, BDKG-01 は減速材の量を抑えて高感度で中性子を探すことができる検出器です。 |
BDKN-05![]() BDKN-01![]() |
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核融合,ITERなどの研究では高速中性子だけを効率よく検出する必要があります。 高速中性子だけを測定できる S670検出器は、減速材を使わずにヘリウム4中に発生するシンチレーション光をSiPM光検出デバイスで検出します。 これによりガンマ線、高速中性子、熱中性子を分離して検出・カウント測定できます。
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S670![]() S670e![]() |
減速材
減速材は、水素原子を多く含んだ材料です。
測定器(BDKN-01,BDKN-03, BDKN-05)は、ヘリウム3を使った比例計数管が中心にあって周りが減速材で囲まれた検出器です。
ヘリウム3は、熱中性子に対して感度が高くなっているためすべての中性子の速度は、減速後に「熱中性子」にしてから検出・カウントする必要があります。 核分裂などから出てきた中性子は高速ですが、これも熱中性子に変えてから検出する形になります。
こちらの図では減速材に入ってきた高速中性子が、水素原子に弾性散乱しながら速度を落として最終的に中心にある検出器に入る様子を図にしています。
減速材が分厚いほど減速の効果も大きくなりますが、遮蔽する効果もあるため減速材が大きすぎると測定器の感度が落ちるというデメリットがあります。
ですが大きな減速材を使うことで中性子検出器のエネルギー特性が良くなるため、被ばく量(シーベルト値)を測定する「中性子線量計」には大きな減速材が使われています。
一方で中性子があるかないか短時間・高感度で調べたいという用途では、小さい減速材が使われています。

減速材 | 利点 | 欠点 | 測定目的 |
BDKN-03 大きな減速材 ![]() |
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広範囲のエネルギーに対する中性子線を測定できるため、人間の被ばく量を測定する線量率(測定単位シーベルト Sv/h)に最適。 |
BDKN-01 小さめの減速材 ![]() 小さめの減速材 ![]() |
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中性子線にたいして応答性がよくなっていますので、中性子線を「探す」目的に向いている測定器です。 サーベイメータの分類になります。 |
減速材の大きさとエネルギー特性
大きな減速材は、幅広いエネルギー(いろいろな速度の中性子線)を減速させ、測定することを可能とするためエネルギー特性は平坦になります。平坦になるということは、どんなエネルギーが来ても測定値の誤差が同じであるという意味になります。 このような良好なエネルギー性能があれば、人間の被ばくを測定するといった目的に利用できます。つまり大きな減速材をもつ中性線の測定器は「線量計」です。
小さい減速材の場合には、高エネルギーな中性子線を減速できないためグラフの赤線・右側のように感度が落ちます。大きな減速材との差はそれほどは大きくありません。一方で低速~中高速までの感度はとても高くなりますが、全体的にはエネルギー特性は平坦ではありません。このような測定器は放射線源があるか、ないかを「探す」目的に向いています。
ヘリウム4検出器
高速中性子線だけを検出する
これまで見てきた中性子・比例計数管検出器には、ヘリウム3が使われています。ヘリウム3は、熱中性子に対して感度が高いため減速材をつかった検出器構造になっています。
ですが高速中性子だけを検出したいという用途では、減速材を使うことができません。減速材を使うとすべてが熱中性子になるため線源以外からの熱中性子と区別が付かなくなります。核融合などの研究では、 高速中性子だけを正確に測定する必要があります。これらの用途には、ヘリウム4によるシンチレーション検出器が採用されています。
ヘリウム4を使った高速中性子検出器は減速材がなく、検出器に入射した高速中性子はヘリウム4で弾性散乱して光を出します。これをSiPM光検出デバイスで検出することで 高速中性子線が入射した正確なタイミングと、エネルギー情報を測定することができます。
ヘリウム4は、NaIと同等の良好なシンチレーション材料であり、熱中性子の感度が低く、逆に高速中性子に対して感度が高くなっています。
