減速材

減速材は、水素原子を多く含んだ材料です。

測定器(BDKN-01,BDKN-03, BDKN-05)は、ヘリウム3を使った比例計数管が中心にあって周りが減速材で囲まれた検出器です。

ヘリウム3は、熱中性子に対して感度が高くなっているためすべての中性子の速度は、減速後に「熱中性子」にしてから検出・カウントする必要があります。 核分裂などから出てきた中性子は高速ですが、これも熱中性子に変えてから検出する形になります。

こちらの図では減速材に入ってきた高速中性子が、水素原子に弾性散乱しながら速度を落として最終的に中心にある検出器に入る様子を図にしています。

減速材が分厚いほど減速の効果も大きくなりますが、遮蔽する効果もあるため減速材が大きすぎると測定器の感度が落ちるというデメリットがあります。

ですが大きな減速材を使うことで中性子検出器のエネルギー特性が良くなるため、被ばく量(シーベルト値)を測定する「中性子線量計」には大きな減速材が使われています。

一方で中性子があるかないか短時間・高感度で調べたいという用途では、小さい減速材が使われています。

減速材の効果

減速材の大きさとエネルギー特性

大きな減速材は、幅広いエネルギー(いろいろな速度の中性子線)を減速させ、測定することを可能とするためエネルギー特性は平坦になります。平坦になるということは、どんなエネルギーが来ても測定値の誤差が同じであるという意味になります。 このような良好なエネルギー性能があれば、人間の被ばくを測定するといった目的に利用できます。つまり大きな減速材をもつ中性線の測定器は「線量計」です。

小さい減速材の場合には、高エネルギーな中性子線を減速できないためグラフの赤線・右側のように感度が落ちます。大きな減速材との差はそれほどは大きくありません。一方で低速~中高速までの感度はとても高くなりますが、全体的にはエネルギー特性は平坦ではありません。このような測定器は放射線源があるか、ないかを「探す」目的に向いています。

ヘリウム4検出器

高速中性子線だけを検出する

これまで見てきた中性子・比例計数管検出器には、ヘリウム3が使われています。ヘリウム3は、熱中性子に対して感度が高いため減速材をつかった検出器構造になっています。

ですが高速中性子だけを検出したいという用途では、減速材を使うことができません。減速材を使うとすべてが熱中性子になるため線源以外からの熱中性子と区別が付かなくなります。核融合などの研究では、 高速中性子だけを正確に測定する必要があります。これらの用途には、ヘリウム4によるシンチレーション検出器が採用されています。

ヘリウム4を使った高速中性子検出器は減速材がなく、検出器に入射した高速中性子はヘリウム4で弾性散乱して光を出します。これをSiPM光検出デバイスで検出することで 高速中性子線が入射した正確なタイミングと、エネルギー情報を測定することができます。

ヘリウム4は、NaIと同等の良好なシンチレーション材料であり、熱中性子の感度が低く、逆に高速中性子に対して感度が高くなっています。

ヘリウム4検出器