化学兵器(CWA)の検出
サリン、VX高感度検出
サリン、タブン、シクロサリンなどのG剤、VXなどのV剤に代表される神経阻害剤は有機リン系化合物です。これらの化学兵器は、ガス状の場合は呼吸器や眼結膜から吸収され全身の神経末端のシナプスに存在するコリンエステラーゼを阻害します。
これによりアセチルコリン(ACh)が分解されず神経内に過度に蓄積されます。その結果として全身の筋肉の動きが止まり、呼吸停止や全身の臓器に深刻な影響を及ぼすことが知られています。
空気、水、食品、表面
神経剤の検出ストリップ DETEHIT は、V剤、G剤を検出します。
使い方は簡単です。ストリップを少し濡らしてから空気中に放置するか、車両、タイヤなどの表面を拭ってから折り曲げて2分待ちます。このときの色の変化により、神経阻害剤の有無を判定します。
検出ストリップは安価な検出方法であるため、IMS検出器などで神経剤があることが分かっているような現場において、より短時間でたくさんの場所を検査することが可能となります。
酵素と色変化
活性酵素は、ある試薬を加水分解する能力があり、これにより色素を作り出します。
神経剤がある場合、酵素は不活性となるため酵素と試薬による加水分解が発生しないため色素が発生せず無色となります。この原理を利用して検出ストリップの結果が無色の場合には神経剤を検出したことになります。
白無色 | 神経阻害剤あり |
黄色 | 神経阻害剤がなく活性酵素があり神経剤は検出されていない。 |
保管期間:5年
検出ストリップ DETEHIT は長期間保管して備えておくことができます。通常の温度範囲(30度以下)の場合には5年間保管できます。
DETEHIT はNATO の標準装備品となっており、世界中の消防、警察、軍隊で利用されています。
神経剤を検出する DETEHIT の特徴
- 保管期間 5年
- 液体に浸した時でも酵素が長時間安定した構造をもっているため様々な環境で利用可能
- 柔らかいストリップ形状であるため、車体、タイヤ、防護服などあらゆる表面を拭うことができます。
- 電源不要で、容易に使用できます。
- 安価で、すぐに神経剤を検出できるため1次スクリーニングに最適です。
防護服の表面

空気中

液体

車両の表面

神経阻害剤の検出=無色(白)
活性酵素は、ある試薬を加水分解する能力がありこれにより色を作り出します。この原理を応用しているため検出結果=色ありは、酵素が活性状態にある、つまり神経剤がないことになります。
サリン、タブン、シクロサリンなどのG剤、VXなどのV剤に代表される神経阻害剤が存在している場合には、酵素が不活性化されるため色が作り出されません。
検出結果として色が黄色になった場合には神経剤がありません。検出結果が無色(白色)の場合には、神経剤があるため防護マスクの着用が必要となります。

反応綿布[1]の色 | 検出結果 |
白(無色) | 神経阻害剤あり |
黄色 | 神経阻害剤がなく活性酵素があり神経剤は検出されていない。 |

検出の手順
- 反応綿布の部分に規定の防露時間、化学剤を付着させます。
- 表面を拭う(暴露時間5分間)
- 液体に浸す(暴露時間5分間)
- ガスに直接触れる(暴露時間2分間)
- ストリップを折り曲げて反応綿布と色素基剤を接触させて2分間待ちます。
- 反応綿布の色を、見本色と比べます。
- 黄色になった場合:神経剤なし
- 白色のままの場合:神経剤あり
検出の注意点
注意点として色素基剤部分は、検出の途中では濡らさないようにしてください。
これが難しい場合には、 あらかじめストリップを半分で切って色素基剤を別のところにおいて乾燥した状態を保ってください。

化学剤の検出器と誤検出について
化学兵器には、サリンやVXなどの神経剤、シアン化水素などの血液剤、皮膚に損傷を与えるびらん剤 (マスタードガスなど)、呼吸器に影響を与える窒息剤 (ホスゲンなど) など、さまざまな種類があります。 一方、工業有害物質には、硫化水素 (H2S)、一酸化炭素 (CO)、ホルムアルデヒド (CH2O) など、日常的な環境にも存在する有毒な化学物質が含まれます。
これらを検知するために使用される検出器は、対象物質が存在する可能性を調べる装置ですが、化学剤の検出においては誤検出のリスクが常に伴います。 そのため、複数の検出器を組み合わせて使用し、検出結果の信頼性を高めることが重要です。
たとえば、ある検出器がサリンを検出した場合でも、神経伝達物質アセチルコリンの分解を阻害するというサリンの作用は、一部の農薬とも共通しているため、 農薬をサリンと誤検出することが、1次スクリーニング (初期検出) 段階では起こり得ます。
このため、初期段階で「可能性がある」とされた場合には、次により高精度な分析装置による「識別」 (2次スクリーニング) が必要です。 それでも神経剤と識別された場合は、試料を正式な検査機関に提出し、質量分析などによる詳細分析を行うことで、農薬か本物の神経剤かを最終的に判断することができます。
このように、化学剤の識別には段階的な検出プロセスが必要であり、単一の検出器だけで判断することは非常に危険です。


神経剤・検出ストリップ DETEHIT
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製品の分類
化学剤検出器 -
使用温度
-20~+40℃(0℃以下の場合不凍液が必要) -
偽剤によるテスト
PH2-3 の緩衝液または 50%濃度のメタノール -
暴露時間
- 5分:液体
- 5分:表面の拭う
- 2分:ガスを直接暴露する
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検出時間
既定の暴露時間後に色素基材と触れ合わせ、2分後に検出 -
包装
アルミホイル密閉・ケースごとに10ストリップ内包 -
感度
20℃空気,検出時間2分GB 1 × 10-5 mg/L GP 5 × 10-6 mg/L GD 8 × 10-6 mg/L GA 8 × 10-5 mg/L VX 5 × 10-5 mg/L GF 3 × 10-6 mg/L -
保管条件
-40~+50℃ (60℃以上では1か月以内) -
有効期限
5年 -
構成
- 固定化コリンエステラーゼを含む反応綿布
- 検出時の色見本としての黄色の綿布
- 色素原基質を含む紙
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